なぜアートなのか?

 

先日子供達のクロッキーを見たとき、とても魅力的になっていて驚きました。

 

2年前の今頃、自分の描いたものを見ながら「うわー下手ー」と叫んでいた姿

が、可愛らしく、懐かしく思えてきます。そしてその成長ぶりを心から嬉しく思います。

 

 

さて、このように進化している子供達ですが、皆さんは絵を描くことや、

物を作ることが子供達にとって、どのように有益なのか考えたことがありますか?

 

 

近年の目覚ましいテクノロジーの普及で、私達の生活は便利すぎるものになり、

人間の能力がAIに変換されていく時代となりました。

しかし面白いことに、このような時代の流れの中で、世界中が「アート」に注目

していることをご存知でしょうか?

 

 

合理的な考え方に行き詰まりを見せる現代、世界企業が停滞を突破するために

「アート」的な感覚を養おうとしています。

それは逆に言えば、AIで補えない能力をみんながこぞって学ぼうとしているのです。

イギリスの名門美術大学では、MBA<経営学修士コース>が出来上がり、

美術大学でビジネスを教える制度が生まれています。

一流のビジネスパーソンであればあるほど、意識的に「アート」を勉強しようとしているのです。

 

 

それではなぜ、そんなにも「アート」が重要なのでしょうか?

 

 

これは、「アート」には、色々な角度から物事を観察し、様々な視点で解釈し、

これまでに無関係であった点と点とを結ぶことができるという特質があるからなのです。

一見全く関係のない点と点をつなぎ、新しい視点を生み出しながら社会に付加価値をつけていく。

これはレオナルド=ダ=ヴィンチ、アインシュタイン、ステイーヴ=ジョブズ

といった偉人たちに見られる共通点でもあります。

そしてこのような回路は、 AIが最も苦手とする部分でもあるのです。

 

感性を育む情操教育だけでは終わらない「アート」の力、パワフルな可能性を秘めたものですよね。

子供達のさらなる成長を願いながら、森のおとでは新たな気持ちで2020年を迎えていきます。

 

東北の伝承切り紙  〜神を宿し神を招く〜

 

 

 

 

「東北の伝承切り紙」という本との出会いから、オカザリという切り紙の世界があることを知りました。

上の写真は、岩手県一関市にしか存在しない切り紙、「網飾り」という正月飾りです。

 

 

どんな人が作っているんだろう?

教室の子供達にも作れるだろうか、

なんとか作り方を教えてもらえないだろうか・・

 

オカザリの美しさに感動した私は受話器を握り、つながるかもわからない電話をしたのでした。

 

 

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「網飾り」のモチーフは、小判、銭、升、鯛、巾着。めでたいものが使われる。

 

 

 

 

 

 

作者は、岩手県一関にある神社の神主さんでした。

 

 

 

 

           熊野神社 宮司 熊谷昭穂さん 87才

             

 

 

 

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なぜここに来たのか、どれほど「網飾り」に感動したか、

その素晴らしさを他の人達や子供達へも伝えたい等

自分の気持ちを話すと、熊谷さんは切り方を教えてくださいました。

 

 

 

この「網飾り」の素晴らしさは、

一枚の紙から2〜3メートルの装飾が、途切れることなくつながっていることです。

 

 

 

煤(スス)で黒くすすんだ高い天井から吊り下げられた正月飾り

には、数々の縁起物が全体に散りばめられ、まるで風に吹かれて揺れ動く

柳の枝のようでもあり、流れ落ちる滝のようでもあった。<「東北の伝承切り紙」本文引用>

 

 

 

 

 

 

 

        「 つながるように、つながるように切りなさい。 」

 

 

熊谷さんは、何も見ないで、頭の中のイメージだけで、どんどんカッターで形を作っていきますが

私は時間がかかっています。こうして実際にやって見ると、子供達がやるためには相当に、ハサミ、

カッターを練習しなければいけないとわかりました。

また私自身、複雑な構造を理解し、カッターの使い方を改めて勉強しなければいけないとも思いました。

 

 

 

 

 

 

 

          「  完成したものをお祓いして神が宿る。

             お祓いしないうちはただの切り紙である。 」

 

 

  

 

 

オカザリは、「神とつながる」ものであり、日本人の精神の礎となった神道が背景にあります。

 

 

ー 熊谷さんの手がける「網かざり」はその壮麗さといい、魅力といい、

  日本を代表する切り紙の一つといって差し支えないものだ。<「東北の伝承切り紙」本文引用>

 

 

 

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この「網飾り」は、祖先が残したボロボロの切り紙を、熊谷さん自身が苦心の末に、

ようやく復元したものだといいます。

しかし、伝統的な古民家が消えていく現代、この切り紙を行う伝承者がいません。

熊谷さんがいなくなれば当然「網飾り」も消えてしまうのです。

 

このような東北の財産が日本からなくなる前に、価値を次の世代に伝えていくとは重要だと思いました。

 

そして私は、子供達の指先や集中力を鍛えるために、教材として、オカザリを教育につなげてゆくこと

はできないだろうか・・そんなことを考え始めました。

 

 

「消えゆく文化のかけはしになる」

 

森のおとのでは、みんなでハサミ、カッターが上手になるように

来年のお正月に向けて、切り絵を少しずつ授業の中に取り入れたいと思います。

 

 

 

 

 

みなさんにとって実りある1年でありますように

 

 

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